HiraShineのたわごと

アニメを中心に映画などの感想を書くブログです。

さよならの朝に約束の花をかざろう 感想(ネタバレ有り)『監督岡田麿里の作家性全開!マキアのエリアルとの出会いから別れまでを描いた大河ファンタジー!』

 

このブログは私Hira3がアニメを中心に、
映画連ドラ作品の感想・考察を主に個人的な備忘録目的で
開設したブログです。

記念すべき第一作目は

さよならの朝に約束の花をかざろう

です。

あ、基本的にネタバレ有りで感想を書きますので

ご覧になられる方はご了承ください。

 

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公式サイトより引用

 

個人的好感度:★★★★★(★5個中)

◆こんな人におススメ

  • 思春期真っ只中な人(感受性が豊かな人)
  • 客観視するよりも主観で感じるものを大事にする人
  • ファンタジーの世界観(特にRPGのような)が好きな人

◆こんな人にはいまいち

  • 論理的に物語を解読するのが好きな人(批評が好きな人)
  • 孤独が好きな人
  • 分かりやすい感動ストーリーが苦手な人

 

◆初見の率直な感想


映画を見終わって最初に感じたのは、

直感的に何か凄いものに触れてしまったみたいな感覚がありました。
映し出される美しい背景や音楽や物語から、

黎明期のドラクエやFFなどをプレイした私のような世代には
勝手知ったるRPG由来のファンタジー世界です。
物語の世界に没入しキャラへの感情移入もすんなりでき感動しました。

しかしながら、少し冷静になって考えると、
見る人の人生経験次第で、評価が大きく分かれる作品だと感じました。
あと岡田麿里作品はファンタジーとの相性が良いとも感じましたね。

2回目見たときは、ストーリーが解っている分、
この物語で表現したいものを集中して見る事ができたので
より深く物語を見ることができ、より深い感動を得ることができました。

 

◆監督岡田麿里作品について


岡田麿里脚本作品は、花咲いろは、あの花、ここさけ(全て劇場版のみ)は見ています。
いろはは昔に見たのでよく覚えていませんが、
ここで感動してくださいみたいな作為的な展開のための感動シーンがはなについて
ボーイミーツガールな物語は大好きなのですが、構えて見ていました。


ちなみに、よく苦言される下ネタぶっ込みや
メンタルにキツい要素はモヤモヤなエンドでない限り個人的には全然問題なしです。
むしろもっとやれ!(笑)

今作のさよならの朝に約束の花をかざろうでも、
展開のためのシーンは無いわけではありませんでした。
しかしながらその多くはリアルとは違うファンタジーの世界観に没頭することで、
この世界なら無いことは無い展開として自然と割り切ってみることが出来たこと、
さらには登場キャラに共感できたことによって、
正直なところ個人的には気になりませんでした。
先に挙げたメンタルにキツい要素もそれほど感じませんでしたが、
中世近代ファンタジーだからこそありがちなことも
ファンタジーのフィルターを外して考えると、
レイリアあたりなどなかなかエグいことをやっています(笑)

岡田麿里作品はファンタジーとの相性が良いと感じたのはまさにこのことで、
岡田麿里100%の作家性を超えた人間性までもが出ているであろう癖の強い要素に、
死や理不尽が現代よりも比較的近く感じられるファンタジーの世界観が
上手くオブラートになっていると感じました。
それ故に今回は岡田麿里のこれまでの作品に見られた刺激の強い作家性は
それほどでもないと感じた人がいたのかもしれませんね。

 

岡田麿里はこれまで、どちらかというと客が求めているものを完璧に作り上げる
職人肌のクリエイターかと見ていましたが、さよならの朝に約束の花をかざろうで、
伝えたいもの、表現したいものを創りあげる
芸術家肌のクリエイターだということが作品から感じられました。

それと、癖のあるセリフや映像作品にしては言葉にして喋らせるにはクドいところは、
これも脚本家由来の作家性であり、あえて喋らせているように個人的には思います。

 

◆美しい世界と音楽と光と影の演出


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公式サイト特報動画より引用 幻想的で美しく描かれたファンタジー世界

RPGに親しんできた人たちならすんなりと受け入れることができる世界観と
美しい背景。それを見るだけでも十分に劇場へ脚を運ぶ価値があると思いますし、
美しい背景には、見る人により感覚的に物語を語り伝える力があると感じました。

昔のRPGは音声による台詞やドット絵以上のアニメーションはありませんでした。
その代わり、音楽で物語を語るところがあって、
このさよ朝のBGMでもそれを感じるところがありました。
音声による台詞や動的に語れる表現で音楽でも語りだすと、くどくなるのですが、
昔を思い出してか個人的にはむしろすんなり物語りに入る切っ掛けにもなりました。

しかしながら2回目でBGMに注意して見ていたら、意外とBGMが使われていないシーンが多かった印象を受けました。

 

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公式サイト予告編動画より引用 光と影による演出、特に逆光で映るキャラが印象的。

それと光と影の演出がとても素晴らしいです!
逆光によるキャラの影や、相対するシーンなどでの光と影の使い方にはシビれました。

 

 

◆マキアのエリアルとの出会いから始まる物語


この物語はマキアを中心にエリアルとレイリアの視点から主観的に見る物語で、
基本的に彼らの目に写らないことは語られないと受け止めました。
(もちろんメザーテ側の人のやりとりなど物語の大枠を理解してもらうために最低限の状況は語られています)

 

何故それが起きたか?

じゃなくて、

起きたことに対してマキア達はどう感じ、どう動いたか?

がこの物語を見るうえで押さえるべき大事なことなのでしょう。

 

孤独な少女として過ごした日々から始まる一滴の雫から、
エリアルとの出会いで川となり、
国家をも揺るがす激流に揉まれ、大河の如く大きな歴史の転換点に接し、
静かに流れ行く大海原へと旅立つエリアルを見送る。

 

外国語版のタイトルを見て確信しました。
Maquia:When the Promised Flower Blooms
(機械翻訳で直訳すると マキア:約束された花が咲くとき)

マキアがタイトルに入っているんですよね。(それだけで感極まるところが…)


そう、これはマキアの大河
マキアのエリアルとの出会いから別れまでの人生を描いた大河ファンタジー

と言えるのではないでしょうか。

 

 

◆引き算の美学と映画の魅力


この物語では、広大なファンタジー世界の世界観を描いていますが
世界設定や多くの人物設定について物語上では細かく説明はされていません。

広大な世界観を描きつつも、マキアの人生を描いた物語に集中してもらうために、
作品を通して伝えたいテーマを伝えるために、あえて細かい説明はしない。

広大な世界やキャラの背景を真面目に全部語ろうとしたら
時間が全然足りない、詰め込み過ぎなのは百も承知です。
そうではなく、そこからの引き算こそが2時間足らずの劇場作品ならではの
より面白く見ることができるスパイスのひとつだと思うのです。

 

追加:描かれていないことには意味があるんですよね。

 

◆母と子の関係と愛の視点から見る物語


この物語は母と息子の子育てを描いている物語でもあります。

この物語では6人の母親もしくはそれに類似した人が出てきます。

  • 実の子ではないエリアルに愛情を注ぎ育てるマキア。
  • 実の子を産んだにも関わらず触れることすら許されないレイリア。
  • エリアルとの子を産み母親にならんとするディタ。
  • マキアの母親の手本となる二人の息子を独りで育て上げたミト。
  • 死んでもなお自分の子を放さなかったエリアルの実の母。
  • そして、事実上のマキアの育ての親となっていた長老のラシーヌ

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公式サイト予告編動画より引用 ラシーヌも育ての親としてマキアのその後の人生に影響を与えている

マキアとは相反するヒビオルを織ったレイリアや、

ディタを助けることで初めて子供を産む営みを目の当たりにしたマキアなど。

 

追記:長老のラシーヌはイオルフの長、すなわちイオルフ達を繋ぐ広い意味での
イオルフ達の母ともいえるのではないでしょうか?
ラシーヌの「外に出たら人を愛してはいけない」教えが
マキア達みんなに伝わり共有されていて
最初にクリムがレイリアを救出する際もマキアの他に何人かのイオルフが集まっていました。

 


これらの母親像が絡み合って見る人により深い親子の物語として
訴えかけてくるのでしょう。


シングルマザーの子育てを描いた物語として真っ先に浮かぶのが、
おおかみこどもの雨と雪です。

おおかみこどもの雨と雪で描かれた母親像は、
母親を経験したことが無い人が語る強い母親像(娘の雪が語る母の物語でもあります)
あくまでも外側から見た母親像の物語です。

さよならの朝に約束の花をかざろうで描かれる母親像はそれすらも内包した
(エリアルはマキアのことを強い人と言っています)
母親像を描いていて、外からみれば強い母親であっても、
母親自身は母親である以前に女性であり少女であり、
始めから強いわけでも、子供を授かったから自然に強くなれるわけでも、
ましてや本能で子供を守る力が備わっているわけでもないことを、
この物語では具体的に描いていると思うのです。

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公式サイト予告編動画より引用 親子の愛とは、親から子供へと一方的に与えるものではない
母の人としての弱さ(エリアルにあたるところなど)、自らの母としてのいたらなさ、
自責の念に陥ること、そして時には子供から励まされる姿もハッキリと描かれており、
それ故に母親を経験した人から、より共感を得られやすくなっていると思うのです。


マキアやレイリアから感じられる母性の源泉は愛であり、
その愛の発端は孤独です。

愛に相反する言葉は孤独

とも言えるでしょう。

 

思春期の頃、孤独感に苛まれたことのある人なら、最初の方でマキアの感じる孤独感が解るかと思います。
エリアルがマキアに反抗したシーンと、長老たちに見守られているはずのマキアが孤独感を感じていたところに
思春期の感覚として近いものを感じました。

この物語で語られている限りでは、孤独から誰かを求める想いが愛することとなり、
それが子供を愛しむ母性や強さとして、母親を経験したことの無い人から見られるものだと思うのです。

そのことから、無償の愛などというものはなく、
愛とは誰かを愛することによって自らも満たされるものだということ

気付かされました。


個人的にはおおかみこどもよりも

男性の視点から多くの父親像と息子との関係を描いた、
バケモノの子の方が

女性の視点から多くの母親像と子との関係を描いた、
さよならの朝に約束の花をかざろうと比較して見ると面白いと思います。

 

◆この物語が描くもの


さよならの朝に約束の花をかざろうは、

別れとは、とても悲しいものだけど、
それ以上に出会いを経て共に育んできたものは、
かけがえのない尊いものだということ。

を孤独に引き込まれる人が多くいる現代に
訴えかけることができる物語だと私は見ています。

 


だから

愛して、よかった。

さよならの朝に約束の花をかざろう

なんですよね。

 

追記:◆題の”さよならの朝に約束の花をかざろう”が意味するもの


さよならの朝に約束の花をかざろう
私はこの題が意味するものにたどり着くまでかなり遠回りしたような気がします(笑)
唯一モヤモヤしていたところでしたからね(笑)
そして自分なりの解釈でそこにたどり着いたとき、
あらためてこの物語の凄さを感じました。

ここで言われている花とはたんぽぽのことです。
たんぽぽの花言葉には『別離』というものがあります。

 

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senderofview.comより引用

 


さよならの朝に約束の花をかざろうが表していることは、

別れ行く人に送り出す言葉を贈ろう。


ということなんだと思います。

この奥ゆかしさ、たまりません!!

 

再追記:”かざろう”というニュアンスから
大げさなものではなく、もっとさりげなく、そっと語りかける
言葉のことを指しているのかもしれません。

 


おおかみこどもの雨と雪でも
たんぽぽの綿毛こそ出てきませんが、
さよならの朝に約束の花をかざっていますよね(笑)

雨を送り出す際にはなが最後に言ったひとこと

しっかり生きて。

親元のはなから巣立ち、自分の世界へと進む雨に、
贈る言葉としてこれに勝るものはありませんよね。

 

さよならの朝に約束の花をかざろうでの
マキアがエリアルに贈った言葉については、
あえてこのブログでは書きません(笑)

 

実は1回目見たときは、このセリフには気が付かなかったんですよね(笑)
永久の別れの間際にシンプルながらも最上の送り出す言葉をかけるんですよ。
そのことに気が付いたときはもう鳥肌ものでした。

自分自身このことになかなか気が付けなかったのは、
別離を伴う門出を経験したことが無かったからだと思うんですよね。
本当におそろしいぐらい、見る人の人生経験で見え方が変わる映画です。


ここまでたどり着いて、
さよならの朝に約束の花をかざろう
オールタイムベスト1の映画だという人の気持ちも
解らなくもないと思いました。

このことで自分の中では、
さよならの朝に約束の花をかざろうだけでなく
おおかみこどもの雨と雪の評価まであがってしまいました(笑)

スルメなんてチャチなものじゃない、
最初のひと口からどこまで噛み進んでも美味しい
こうしてブログを書いているときも身震いが止まらない
そんな凄まじい物語だと改めて感じました。

 

 

 


さよならの朝に約束の花をかざろうを初めて知ったときは、
まさかここまで色々と考えたくなる物語になるなんて思ってもいませんでした(笑)
見る人のそれまでの人生経験、見る人の紡いできたヒビオル次第で、
複数の切り口で見ることが出来る物語だと思います。

物語の原点がマキアの思春期に感じられるような孤独感からなので、
色々と知りすぎた大人よりも、案外思春期真っ最中の人の方が
自然にこの物語を受け入れられるように思います。


マキアやエリアルに共感、感情移入できるか否か、すなわち、
マキアやエリアルのヒビオルに、見る人自身のヒビオルを重ねることができるか否かで
見え方や評価が大きく変わってくる物語なのです。

 

一見作られた感動の物語に見えるのかもしれませんが、
マキアたちのヒビオルと見ている人自身のヒビオルが重なったとき、
自然と涙があふれてくる物語なのだと思うのです。

 

これまでの作家性の強いオリジナルアニメ作品といえば、
宮崎駿細田守などそのほとんどが男性監督によるものでした。

女性作家の作家性があふれる芸術性のあるオリジナルアニメ作品は
生み出されるだけでも尊くとても貴重なものだと個人的には思います。

岡田監督には批評で突っ込まれても、この作家性を貫き作り続けてほしいと
個人的には願っております。

 

↓影響受けまくり(笑)のおススメ感想&評論です。

kato19.blogspot.jp

www.club-typhoon.com

akiba-souken.com

追記:この感想も凄い!

www.saiusaruzzz.com

tkihorolo.hateblo.jp