HiraShineのたわごと

アニメを中心に映画などの感想を書くブログです。

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? 過去作感想『シャフト節炸裂!男の子の淡い恋心をリスペクトした成長物語』

このブログでは最新のアニメ作品だけでなく、
過去に見た作品の感想も書いていく予定です。
あ、念のためネタバレです(笑)

今回は、

打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

です。

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公式サイト特報動画より引用

 

個人的好感度:★★★★(★5個中)

◆こんな人におススメ

  • 小中学生の頃、かなわなかった初恋をした男性
  • ギャルゲーが大好きだった人
  • 考察して謎を読み解く物語が好きな人

◆こんな人にはいまいち

  • 子供の頃の思い出なんて恥ずかしいだけで興味が無い男性
  • 解りやすいボーイミーツガールを求めている人
  • 男子のキモい(と言われる)ところが嫌な人
  • ドラマ版打ち上げ花火のなずな(奥菜恵)が好きだった人(物語の一部にされてしまいます…(笑))

 

◆初見の感想・感想の要点


まず始めに言いたいのは、

よくもまぁ奥手な小中坊男子が抱く、
無かったことにしたい、他人からは気持ち悪いと言われる
恥ずかしい恋心を、肯定しこんなにも美しく映像化してくれましたね!!

 

これに限ります(笑)

 

典道のとった行動も祐介のとった行動も
ほぼほぼ全部解る!!それな!!
のオンパレードでしたね!

女の子と過ごしたあのときをやり直すか否かなんて、
まるでギャルゲーじゃないですか!!(笑)

 

ある1ヶ所を除いてほぼほぼツボオブツボの連続で、
個人的には2017年に見たアニメ映画ではナンバー1でした。

 

この物語は考察ありきの物語なので様々な読み解き方ができるのですが、
この物語を最大限に楽しめる人の条件としては、
あのクソガキの典道(笑)に自然と共感&感情移入できる人です。
恥じらいが残ったり許容力が低い思春期には無理だろこれ(笑)

間口がめっちゃ広い(宣伝しまくった)くせに
なんてストライクゾーンが狭い物語なんだよ(笑)

 

あと、おっさんがのたうち回ってつぶやいている
ドラマ版の儚さがよかったのになんでこんな…
知らんがな!!ざまあみろ!!(笑)

◆シャフト作品ならではのダークで不思議な世界


この物語、最初はほぼほぼドラマ版と同じ展開で物語が進んで行くのですが、
シャフト版オリジナルのもしも玉を何度も投げて、その都度典道のもしもが叶う物語へと
変貌していく不思議かつダークな物語です。

そして不思議かつダークな雰囲気は背景や世界観だけでなく、
ヒロインのなずな自身も持ち合わせています。

 

さらには逆回転する風力発電の風車、灯台前の先の駅の名前、
花火の形、地面に落ちるもしも玉などなど…
そこかしこにこの物語の謎を読み解くヒントが隠されています。

 

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 公式サイト予告動画より引用 風車など背景にも注目。

◆どこまでも典道視点の物語


先に結論から言ってしまうとこの物語は

クソガキの典道がなずなへの自身の想いに向き合って成長する物語

なんですよねぇ。

 

もちろん物語の進展に必要なことや、比較して典道の特徴を際出させたいところは
客観視点で描かれていますが、少なくとも典道がいるシーンは、
典道が見ている世界なんですよね。

 

この物語の批判でよく見られる

なずなの作画が不安定

といわれている点ですが、
個人的にはこれがむしろいい味を出しているんじゃないかと思っています。

 

男性なら多分(笑)解るんじゃないかと思いますが、
好きになった女の子って客観的に見たらそれほどでもなくても、
特別綺麗に可愛く見えちゃうんですよね(笑)

そこに初期の思春期特有の定まらない曖昧な心が重なれば、
毎回違って見えちゃうものなんですよ。
とくにドキッとするしぐさのシーンとかでは、

やたらと可愛く色っぽくなずなが描かれています(笑)

これはやはり見る人に典道から見える世界を堪能してもらうために、
典道に共感&感情移入してもらうためにだと思うんですよね。

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公式サイト予告動画より引用 背景に立ち絵。ギャルゲーそのまんまですね(笑)

ただこれは、ガキの思考を馬鹿にしているような大人や、
男子のことを理解許容しづらい若い女子には大変厳しいことだと思うんですよ(笑)

 

 

◆ドラマ版とは目指しているところが違う物語


この物語はドラマ版と比べると、もしも玉の存在、なずなの母の再婚相手、
なずなも一緒に泳ぐ、自転車で逃げるところなど以外は

途中までドラマ版とほぼ同じ展開です。


あ、作品全体を通しては小学生だったのが中学生になっていますね(笑)

 

ところが典道となずなが駅に来たところから話が変わっていきます。

ドラマ版では二人は電車に乗らず、プールから花火を見て
最終的には何か教条的なことを大人達が言って濁して終わる…
というのが個人的なドラマ版の印象です。

あ、男の子みんなが叫んでいるシーンも同じですが、
ドラマ版は子供ではどうにもならない儚さみたいなものが感じられましたが、
シャフト版はこういう可能性もあるという希望みたいなものが感じられたので、

やっぱり目指しているところが全然違うんだよなあと感じました。
自分は断然後者の方が好きですけどね(笑)
同じ事をやっているのに不思議なものです。

 

◆典道と祐介の気持ちと行動を考える


安直に行動原理から二人の行動を読み解くと、
好きなのになずなへの積極的な行動をとれない序盤の典道や、
好きなのに祐介が典道になずなを譲るとか意味不明かも知れません(笑)


これなんかはもう本当に個人的に解る解る解るなところで(笑)

一言で言い切るなら結局、
あの時点では二人とも自分の気持ちには向き合えていないんですよ。

 

なずなのことが好きだからなずなを悲しませることはしたくない。
でも、表立って好きだという行動を取ったら、
仲間からからかわれたりされるし恥ずかしい。
それに、もし告白して嫌われたらどうしよう…。
それと、あいつがなずなの事を好きだというのなら、譲っても…いや…。


そんな感じで堂々巡りな状態になっているんですよね(笑)

 

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 公式サイト予告動画より引用 こんな瞳でみつめられたら…ねぇ(笑)

◆大人達は典道から見てほぼ全員ろくでもないやつばっかり


わかるわかる、大人ってクソだよねー(棒)

典道視点の物語ですからね。
目に映る大人はほぼ全員ろくな描かれ方がされていません(笑)

強いて綺麗に描かれている大人といえば、一瞬だけ映った
亡くなったなずなの父親ぐらいですかね。

 

職場恋愛先生の二人もアレですし、祐介の父ちゃんはドラマ版と同じですし、
もしも玉打ち上げる花火師のおっちゃんは酔っ払った蛭子さんですし(笑)


特になずなの家系がヤバ過ぎです(笑)

なずなの母は3回目の結婚って…
お前それ絶対奥菜恵のことだろ!?(爆)

 

それと再婚相手の男性、
お土産に持ってきたアイスが無駄にかわいくて超絶気持ち悪い(笑)
絶対なずなのことを意識して
選んできただろこのおっさん!!

今まで見てきたアニメの中でダントツでナンバー1の気持ち悪さでしたよ。

 

なぁ聞いてるか?ドラマ版のなずな(奥菜恵)にホレていたお前ら(笑)
あのアイスはホントに気持ち悪かったからな(こら)

 

ああ、俺は知ってるんだぜ、
小学生だったから良かった物語を中学生にして挙句の果てには電車に乗せちまったら原作のはかなさとか全部吹っ飛んで台無しだって言いたいんだろ?
そりゃもしも玉なんぞを使って、俺達のなずなを連れ出し、俺達の打ち上げ花火をぶち壊そうとする中坊のクソガキ典道を一発ぶん殴るでもしないと気が済まないわな(笑)

 

正直このシャフト版打ち上げ花火、毒もいっぱい含まれているんですよね(笑)
ドラマ版の熱狂的ファンだった人たちを困惑させただけでも、
個人的にはこのシャフト版打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?
大大大成功だったと思うんですよね(勿論興行の話ではない)
要するにお前らドラマ版のなずなにホレたおっさん共が主役の話じゃねーよってことですよ(笑)

 

◆シャフト版打ち上げ花火の個人的に思う良くないところ


まず、

典道のビジュアル(顔)がかっこ良すぎです。

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公式サイト予告動画より引用 興行のことを考えたらこれが落としどころなんでしょうね。


Just Because!瑛太みたいな眠そうな顔してお世辞にもかっこいいとはいえない
ビジュアルの方が味が出ますよほんと。配給元の売りたい下心が見え見えです。
それだけで★1つマイナスです。

まぁチビだしガキだしこれ以上は仕方がないか。

 

それと、良くないというか単に個人的な好みとその他理由で退屈だったのが
なずなが歌う瑠璃色の地球のところ。
他の人の感想では意外にも瑠璃色の地球は良かったという人が多くて驚いたのですが、
感情移入した身から言わせてもらえば、あれは好きな人が歌うから良いのであって、
瑠璃色の地球そのものが良いわけではないんですよね。

それとあれ、ギャグテイストが許される子供向けのアニメなら
典道のやつアヘ顔で鼻の下伸ばしてよだれ垂らした絵になるシーンですから!(笑)

つまりあのお姫様と王子様のシーンって典道の妄想です。
男の子って案外ロマンチストなんですよ(笑)

 

ただ…それは自分の場合、思春期以前に済ませてしまったことなので(爆)
思春期の頃はそれだけはやるまいって思っていたんですよ。
もしも玉で戻ってもう1回瑠璃色の地球やる感じだったので駄目だこりゃって思いそうになったのですが、
2回目は妄想どころじゃなかったように描かれていたのは良かった(笑)
そのお陰で、あれは典道の妄想だということがわりとはっきり解ったんですけどね。

 

瑠璃色の地球だけは個人的には駄目でした。

 

◆最後が解らない?んな馬鹿な


蛭子さん(違う)が打ち上げたもしも玉が壊れて、もしも玉が写したあったかもしれないもしもを美しく写して、
そのかけらを典道が掴み取る。これ即ち典道はなずなへの想いに向き合えるようになって、
成長したことを意味しているんですよね。
同じようなことを経験した私みたいな人間にとっては、もしも玉を使い続けた先にある
これ以上にない美しい救いの結末なんですよ。

花火が打ちあがり、なずなとの二人だけの楽しいひとときは終わりをつげ、
キスをしてなずなと別れる典道。
その後、典道のいない教室で出欠を確認し、典道がいないことを知らなさそうな先生の声が響き、
なずなの花が映っておしまい。

え?解らない?

 

見る人に想像の余地を残しているってことです。

作り手がこれを元にお好きにどうぞって言っているんですよ。

 

追記:この結末ですでに
典道がなずなへの自身の想いに向き合って成長する物語
は描ききっているわけですから、その先は見る人の解釈や想像で勝手に描いても
物語の根幹が揺らぐことはないということです。


想像して結末を考えないと損ですよ損!!

一番考えられる解釈としては、


典道はなずなに会いに行くために、もしもの先のまさかの世界へ行くために、
教室を抜け出したと考えるのが妥当でしょう。
その先会えたかどうか?それこそ本当に見る人の想像にお任せしますですよ。

 

ここでなずなの母の再婚相手にされてしまった人たちに朗報(笑)
この結末なら想像次第で、はかない物語として終わらせる余地もあるんですよね。
良識のある大人ならその選択は必ずしもハッピーエンドじゃないということは解ると思います。

もしも玉のかけらが写したようなハッピーなことになる可能性は限りなく低いです。
そもそも、ひとり東京へ行ったところでなずなに会えるとは限りませんし、
会えたところで両親はアレですから、なずなとの関係が簡単に上手くいくわけがありません。
良識のある大人なら、典道は十中八九戻ってくる(そもそも行けたことすら不確定)ことになるでしょうし、
仮になずなと共に過ごすことになったとしても、様々なものを犠牲にしなければ幸せは得られない
ということぐらい容易に想像できるでしょう。

 

典道自身、なずなへの想いに向き合えるようになって成長したことは素晴らしい。
(振り回されていただけのドラマ版の典道よりは全然眩しいです)
だけど、その先へ進んでも現実ではろくなことにならない。
だからやはりこの物語は少年少女達が大人の世界に抗ってもがく儚い物語だ。
という解釈も可能なはずです。

 

あと、小学生だったのが中学生になってしまったのが
良くないと言われることに対しては、

もしも小6の俺達が中1でこの日を迎えていたら?

という解釈で見ていけばそれなりに納得できると思います。
そもそも、小6と中1なんて外的な環境や立場こそ大きく変わるものの、
当の子供達自身はみんながみんな、"中学生"、"小学生"と
単純にカテゴライズして分けられるほど変わるわけではありません。
安易に中学生、小学生という記号で彼らを見てはいけないということだと思います。
(これが中2ぐらいになるとまた違ってくるようですが)

個人的には小学生のガキ臭さが残る中1の男子なんてむしろリアルに感じましたよ。

 

◆見る側の考察力、想像力にゆだねる物語


なんだかんだ言っても、この物語は全体的に見る人の想像力に
行間や行く末をゆだねることが出来るように作られているので、
思春期初期の男子の気持ちを理解もしくは許容することさえできれば、
見方次第で色々と楽しむことができる物語なんですよね。

このブログでは詳しく書きませんでしたが、
当然女の子の視点でなずな側から見るのもアリだと思います。

 

まさしく


打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?

どこから見るか?

それがこの物語の最大の特徴だと思うのですよね。

 

 

単にドラマ版の丸写しで良いのならそれこそ、
マッドハウスにでも京アニにでもやらせればいいんですよ。
それをシャフトにやらせるところに味があるというのに皆気が付いてほしいです。


興行的には必ずしも成功したとは言いがたい結果になりましたが、
ドラマ版の下位互換だとは言わせない魅力があるということを
これからも語り続けていきたいと思っています。

 

 

 ↓おススメ&参考になった批評です(笑)

blog.monogatarukame.net